Handbook:Parts/Installation/Kernel/Dist-Kernel
ディストリビューションカーネル
ディストリビューションカーネルは、カーネルを展開、構成設定、コンパイル、インストールする完全なプロセスをカバーする ebuild です。この手法を利用する最大の利点は、@world アップグレードの一部として、パッケージマネージャによってカーネルが新しいバージョンに更新されることです。これは emerge コマンドを実行する以外にユーザの関与を必要としません。ディストリビューションカーネルはデフォルトでは、大部分のハードウェアをサポートするように構成されますが、カスタマイズするための 2 つの機構が提供されています: savedconfig とコンフィグスニペットです。設定についてのさらなる詳細はプロジェクトページを参照してください。
ディストリビューションカーネルをインストールする
カーネルパッケージをインストールする前に、/etc/portage/package.use 内でパッケージ sys-kernel/installkernel に対して dracut USE フラグを追加する必要があります:
sys-kernel/installkernel dracut
この段階でさらに sys-kernel/installkernel の USE フラグを追加するのもよいでしょう。詳細については Installation/Kernel#Installkernel の節を参照してください。
Gentoo パッチが当てられたカーネルをソースからビルドするには、次をタイプしてください:
root #
emerge --ask sys-kernel/gentoo-kernel
システムの管理者として、カーネルのソースをローカルでコンパイルするのを避けたい場合は、代わりにコンパイル済みのカーネルイメージを使用することができます:
root #
emerge --ask sys-kernel/gentoo-kernel-bin
省略可能: 署名付きカーネルモジュール
ビルド済みディストリビューションカーネル (sys-kernel/gentoo-kernel-bin) 内のカーネルモジュールは既に署名されています。ソースからビルドしたカーネルのモジュールに署名するためには、/etc/portage/make.conf で modules-sign USE フラグを有効化し、署名のためにどの鍵を使用するかを任意で指定してください:
USE="modules-sign"
# 任意で、カスタム署名鍵を使用するために。
MODULES_SIGN_KEY="/path/to/kernel_key.pem"
MODULES_SIGN_CERT="/path/to/kernel_key.pem" # MODULES_SIGN_KEY が証明書を含まない場合のみ必須です。
MODULES_SIGN_HASH="sha512" # デフォルトは sha512 です。
MODULES_SIGN_KEY が指定されない場合は、カーネルビルドシステムが鍵を生成し、鍵は /usr/src/linux-x.y.z/certs に保存されるでしょう。各カーネルリリースに対して同じ鍵が使用されることを確実にするためには、手動で鍵を生成することを推奨します。鍵は以下で生成することができます:
root #
openssl req -new -nodes -utf8 -sha256 -x509 -outform PEM -out kernel_key.pem -keyout kernel_key.pem
MODULES_SIGN_KEY と MODULES_SIGN_CERT は異なるファイルにすることもできます。この例では、OpenSSL によって生成される pem ファイルには鍵とそれに伴う証明書の両方を含んでいるため、両変数は同じ値に設定されています。
OpenSSL が鍵の生成についてのいくつか質問をしてくるでしょうが、できる限り詳細にこれらの質問に答えることを推奨します。
安全な場所に鍵を保存してください。最低限の措置として、鍵は root ユーザによる読み取りのみ可能にすべきです。このことを以下のようにして確認してください:
root #
ls -l kernel_key.pem
-r-------- 1 root root 3164 Jan 4 10:38 kernel_key.pem
これが上と違ったものを出力する場合は、以下で権限を修正してください:
root #
chown root:root kernel_key.pem
root #
chmod 400 kernel_key.pem
省略可能: カーネルイメージに署名する (セキュアブート)
ビルド済みディストリビューションカーネル (sys-kernel/gentoo-kernel-bin) 内のカーネルイメージは既にセキュアブート用に署名されています。ソースからビルドされたカーネルイメージに署名するには、/etc/portage/make.conf で secureboot USE フラグを有効化し、署名のためにどの鍵を使用するかを任意で指定してください。セキュアブートとともに使用するためにカーネルイメージに署名するには、カーネルモジュールも署名する必要があることに注意してください。カーネルイメージとカーネルモジュールの両方に署名するために、同一の鍵を使用しても構いません:
USE="modules-sign secureboot"
# 任意で、カスタム署名鍵を使用するために。
MODULES_SIGN_KEY="/path/to/kernel_key.pem"
MODULES_SIGN_CERT="/path/to/kernel_key.pem" # MODULES_SIGN_KEY が証明書を含まない場合のみ必須です。
MODULES_SIGN_HASH="sha512" # デフォルトは sha512 です。
# 任意で、セキュアブートを有効化してブートするために。署名鍵は同一でも別でも構いません。
SECUREBOOT_SIGN_KEY="/path/to/kernel_key.pem"
SECUREBOOT_SIGN_CERT="/path/to/kernel_key.pem"
SECUREBOOT_SIGN_KEY と SECUREBOOT_SIGN_CERT は異なるファイルにすることもできます。この例では、OpenSSL によって生成される pem ファイルには鍵とそれに伴う証明書の両方を含んでいるため、両変数は同じ値に設定されています。
この例では、カーネルイメージに署名するために、モジュールに署名するために生成されたのと同じ鍵が使用されています。カーネルイメージに署名するために、2 個目の別の鍵を生成して使用することも可能です。前節と同じ OpenSSL コマンドをもう一度使用することができます。
新しい鍵を生成する手順については上の節を参照してください。カーネルイメージを署名するために別の鍵を使用する場合は、同じ手順を繰り返すことができます。
セキュアブートを有効化して正しくブートさせるためには、使用するブートローダにも署名し、証明書が UEFI ファームウェアまたは Shim によって許可されなくてはなりません。これはハンドブック内で後で説明します。
アップグレードと後処理
一度カーネルがインストールされたら、パッケージマネージャが自動的にカーネルを新しいバージョンに更新するでしょう。古いバージョンは、パッケージマネージャに古いパッケージを片付けるように指示するまで残ります。ディスク容量を再利用するためには、定期的に --depclean
オプション付きで emerge を実行することで、古いパッケージを片付けることができます:
root #
emerge --depclean
あるいは、古いカーネルのバージョンだけを片付けるには:
root #
emerge --prune sys-kernel/gentoo-kernel sys-kernel/gentoo-kernel-bin
インストール/アップグレード後タスク
ディストリビューションカーネルは、他のパッケージによってインストールされたカーネルモジュールの再ビルドに対応しています。Portage は、linux-mod-r1.eclass の一部として dist-kernel USE フラグとともにフックを提供し、virtual/dist-kernel に対するサブスロット依存を制御します。
ディストリビューションカーネルを使用する場合、この USE フラグは /etc/portage/make.conf 内でグローバルに適用されるべきです。そうすることで、sys-fs/zfs や x11-drivers/nvidia-drivers などのパッケージは新しく更新されたカーネルに対して自動的に再ビルドされ、適用可能であれば、それに従って initramfs が再生成されるでしょう。
手動で initramfs または Unified カーネルイメージを再ビルドする
必要であれば、カーネルアップグレード後に、以下を実行して手動で再ビルドを実行してください:
root #
emerge --ask @module-rebuild
カーネルモジュール (ZFS 等) のうちいずれかが初期ブートで必要であれば、続けて次を利用して initramfs を再ビルドしてください:
root #
emerge --config sys-kernel/gentoo-kernel
root #
emerge --config sys-kernel/gentoo-kernel-bin